健康診断の見方VIEW OF HEALTH CHECHKUP

心電図

健康診断の見方のご案内

心電図検査

心電図検査とは、心臓が鼓動を打つ際の微弱な電気信号を波形として記録し、その波形から心臓の状態を把握する検査です。

心臓は私たちの意志とは関係なく、規則的に電気的興奮がおこり、これを心臓各部に伝え、心筋の収縮を起こし、血液を全身に送っています(心臓のポンプ機能)。このような心臓の電気的変化をグラフ化したのが心電図です。

  所見名 所見説明
  異常なし

心電図に異常な所見を認めません。

異常Q波 心筋梗塞等 (陳旧性含む)

心筋症などの重大な所見の可能性があります。受診の可否は判定区分を参照してください。

異常Q波

心筋梗塞・心筋症などの疾患の他、健常者にもこの所見が見られることがあります。受診の要否は判定区分を参照してください。

異常Q波(下壁)

心筋梗塞・心筋症などの疾患の他、肥満者にもこの所見が見られることがあります。受診の要否は判定区分を参照してください。

q波

左心室肥大・心筋梗塞などの疾患の他、健常者にもしばしば見られます。受診の要否は判定区分を参照してください。

QS波(前壁)

左心室肥大・心筋梗塞などの疾患の他、高身長・痩せ型の健常者にも見られます。受診の要否は判定区分を参照してください。

q波(側壁)

左心室肥大・心筋梗塞などの疾患の他、健常者にもしばしば見られます。受診の要否は判定区分を参照してください。

q波(下壁)

心筋梗塞のこともありますが、肥満者にもしばしば見られます。受診の要否は判定区分を参照してください。

r波増高不良

左心室肥大や回復後の心筋梗塞のこともありますが、健常者にもしばしば見られます。受診の要否は判定区分を参照してください。

QRS軸偏位 左軸偏位

心臓を収縮させるための電気の流れが左に偏っています。左心室肥大などの疾患の他に肥満者・高齢者にも見られ、この所見のみではあまり問題にはなりません。

左軸偏位(高度)

心臓を収縮させるための電気の流れが左に偏っています。左心室肥大などの疾患の他、肥満者・高齢者にも見られることがあり、この所見のみではあまり問題にはなりません。

左軸偏位(軽度)

心臓を収縮させるための電気の流れが左に偏っています。左心室肥大などの疾患の他、肥満者・高齢者にも見られ、この所見のみではあまり問題にはなりません。

右軸偏位(高度)

心臓を収縮させるための電気の流れが右に偏っています。重症肺疾患で心臓に負担がかかるときに見られますが、痩せ型の健常者にも見られます。この所見のみではあまり問題にはなりません。

右軸偏位(軽度)

心臓を収縮させるための電気の流れが右に偏っています。重症肺疾患で心臓に負担がかかるときに見られますが、痩せ型の健常者(特に若い女性)にも見られます。この所見のみではあまり問題にはなりません。

不定軸

心臓を収縮させるための電気の流れが左に偏っているか右に偏っているか判断ができない状態です。この所見のみではあまり問題にはなりません。

R波増高 左室側高電位差

左心室肥大のこともありますが、健常者(高身長・痩せ型の若い男性が多い)にも見られます。この所見のみではあまり問題になりません。

左室側高電位差の疑い

左心室肥大のこともありますが、健常者(高身長・痩せ型の若い男性が多い)にも見られます。この所見のみではあまり問題になりません。

ST低下 ST低下(極高度)

狭心症・高度の心肥大等に伴う重大な所見の可能性があります。特に胸痛など自覚症状がある場合は早急に循環器科を受診してください。

ST低下(高度)

狭心症・高度の心肥大等に伴う重大な所見の可能性があります。特に胸痛など自覚症状がある場合は早急に循環器科を受診してください。

ST低下(中等度)

狭心症等に伴う重大な所見の可能性がありますが、痩せ型の若い健康女性にも見られる所見です。受診の要否は判定区分を参照してください。胸痛など自覚症状がある場合は早急に循環器科を受診してください(特に高血圧・脂質異常症・糖尿病のある中高年者)。

ST低下(軽度虚血型)

狭心症等に伴う重大な所見の可能性がありますが、痩せ型の若い健康女性にも見られる所見です。受診の要否は判定区分を参照してください。

ST低下(軽度非虚血型)

狭心症等の可能性がありますが、痩せ型の若い健康女性にも見られる所見です。受診の要否は判定区分を参照してください。

ST低下(軽微)

健康女性にも見られますが、心臓肥大・狭心症のこともあります。受診の要否は判定区分を参照してください。

ST低下(軽微正常)

心臓肥大・狭心症もないとはいえませんが、ほとんどの場合、重大性はありません。

T波異常 陰性T波(中等度)

心筋梗塞・心筋症などで見られることがあり、原因を調べるため循環器科で精密検査をお勧めする場合があります。健常者(特に若い女性)でも見られることがあります。受診の要否は判定区分を参照してください。

陰性T波(軽度)

虚血性心疾患や心筋梗塞など様々な原因が考えられ、健常者(特に女性)に見られることもあるので、受診の要否は判定区分を参照してください。

平低T波

心筋梗塞や左室肥大など様々な原因が考えられ、健常者に見られることもあるので、受診の要否は判定区分を参照してください。

その他の陰性T波

様々な原因が考えられ、健常者に見られることもあるので、受診の要否は判定区分を参照してください。

心房伝導障害 Ⅰ度房室ブロック

心臓の上部での電気の流れに時間がかかっている状態です。

Ⅰ度房室ブロック(軽度)

心房から心室への刺激伝達に軽度の不具合が見られます。健常者(特に若い人)にも見られますので、受診の要否は判定区分を参照してください。めまい、失神などがある場合は循環器科を受診してください。

Ⅱ度(中等度)WPW症候群(持続性) WPW症候群(間欠性)M-Ⅰ、M-Ⅱ

心房と心室の間に正常な電気刺激伝導路とは別の副伝導路が存在し、心室の早期興奮が生じる病態です。受診の要否は判定区分を参照してください。

PQ短縮

心房から心室へ刺激の伝わる時間が通常より短く、刺激伝達路に異常の疑いがあります。心臓の拍動が危険なほどに早くなることがあるかもしれません。発作的に動悸を感じることがあれば、循環器科を受診してください。

心室伝導障害 完全右脚ブロック(持続性)

心室内にある3本の刺激伝達路のうち右1本に障害があり伝達されない状態です。高血圧など様々な原因があるので、受診の要否は判定区分を参照してください。

完全右脚ブロック(間欠性)

心室内にある3本の刺激伝達路のうち右1本の伝達にときおり障害が起こる状態です。高血圧などいろいろな原因があるので、受診の要否は判定区分を参照してください。

不完全右脚ブロック

心室内にある刺激伝達路の異常を疑う所見ですが、正常でもときどき見られ、これだけではあまり問題になりません。受診の要否は判定区分を参照してください。

V1・2のRR'型

波形に変化がありますが重大な所見ではなく、これだけではあまり問題になりません。

不整脈 上室期外収縮(頻発)

心臓を収縮させる通常の刺激以外に、心房から異常な刺激が頻繁に発生し、心拍が不規則になります。ほとんどの場合、治療は不要ですが、原因や心房細動に進展する危険性を評価するため、受診をお勧めすることがあります(特に中年女性・高齢者)。判定区分を参照してください。

心室期外収縮(頻発)

心臓を収縮させる通常の刺激以外に、心室から異常な刺激が頻繁に発生し、心拍が不規則になります。動悸や失神がなければ治療は不要ですが、精査が必要なこともあるので、循環器科を受診してください。

移動性心房調律(正常)

本来は心臓を収縮させる刺激発生場所は一定ですが、その場所が心房内で移動しているのが見られます。この所見だけでは問題ありません。

心室期外収縮(2連発)

心臓を収縮させる通常の刺激以外に、心室から異常な刺激が2回連続して発生し、心拍が不規則です。これが頻繁にあると動悸や失神の原因になるので、判定区分を参照の上、循環器科を受診してください。

心室期外収縮(多形性)

心臓を収縮させる通常の刺激以外に、心室内の複数の場所から異常な刺激が発生し、心拍が不規則です。重大な心疾患との関係も考えられるので、循環器科を受診してください(特に動悸や失神があるときは速やかに)。

心室期外収縮(RonT)

心臓を収縮させる通常の刺激以外に、心室から異常な刺激が前の心拍に重なって発生しています。失神が起きることもあるので、判定区分を参照の上、循環器科を受診してください。

心房細動

心房が無秩序に活動し非常に不規則な心拍が生じています。弁膜症・心筋症・甲状腺機能亢進症などで見られます。心房内に血液の塊ができて脳梗塞を起こすことがあります。また、脈が極端に速かったり遅かったりすると、全身に十分な血液を送れなくなり、動悸・息切れが起こります。早めに循環器科を受診してください。

異所性心房調律 (ほぼ正常)

心臓を収縮させる刺激が、心房内の通常以外の場所から発生しています。この所見だけでは特に問題はありません。

上室期外収縮(2連発)

心臓を収縮させる通常の刺激以外に、心房から不定期な刺激が2回続けて発生し、心拍が不規則になります。原因や危険な不整脈との関連について精査が必要なので、循環器科を受診してください。

上室期外収縮(多源性)

心臓を収縮させる通常の刺激以外に、心房の複数の場所から異常な刺激が多発し、心拍が不規則になります。原因や危険な不整脈との関連について精査が必要なので、循環器科を受診してください。

洞性不整脈

脈が吸気に速まり呼気に遅くなる正常の現象(呼吸性不整脈)である可能性が高いですが、それ以外の原因で脈の間隔に変化が見られることもあります。受診の要否は判定区分を参照してください。

頻脈(軽度)

1分間に100~119回以上のやや速い心拍が見られます。緊張・発熱・重症貧血・甲状腺機能亢進症などに見られますが、心疾患によることもあります。

QRS幅の広い頻拍

心室頻拍ないし変行伝導現象やWPW症候群による上室頻拍などの重大な不整脈(脈の速い状態)が考えられます。循環器科を受診してください。

QRS幅の狭い頻拍

上室頻拍や心房粗動などの治療を検討すべき不整脈(脈の速い状態)が考えられます。循環器科を受診してください。

徐脈(高度)

1分間に40回以下の通常より非常に遅い心拍です。心疾患による可能性が高いですが、マラソンや水泳などの強く長い運動習慣のある方、自律神経の異常、甲状腺機能低下などでも見られます。心拍が少ないために息切れ・めまい・失神が起こるときは、早急に循環器科を受診してください。

徐脈(中等度)

1分間に41~45回の通常より遅い心拍です。マラソンや水泳などの強く長い運動習慣のある方、自律神経の異常、甲状腺機能低下などで見られ、心疾患による可能性もあります。心拍が少ないために息切れ・めまい・失神が起こるときは、早急に循環器科を受診してください。

徐脈(軽度)

1分間に46~50回の通常よりやや遅い心拍です。マラソンや水泳などの強く長い運動習慣のある方、自律神経の異常、甲状腺機能低下などで見られますが、心疾患による可能性もあります。受診の要否は判定区分を参照してください。

上室期外収縮(散発)

心臓を収縮させる通常の刺激以外に、心房から異常な刺激が発生し不整な拍動があります。高血圧、心臓病、貧血などや緊張、ストレスにより見られることがあります。

心室期外収縮(散発)

心臓を収縮させる通常の刺激以外に、心室から異常な刺激が発生し不整な拍動があります。心臓病以外に健常者でも緊張、ストレスなどで見られる場合があります。

その他 低電位差

心電図の全体の波の高さが通常より低いことをいいます。心臓の周囲に水が溜まっている場合や肺の空気量が増加する肺気腫や肥満の方にも見られます。

ST上昇

放置してよいものから至急受診を要するものまで、いろいろあるので、判定区分に従ってください。痩せ型の若い男性には正常でも見られます。急性心筋梗塞にも見られるので、胸痛など自覚症状がある場合は、早急に循環器科を受診してください(特に中高年男性、高血圧・脂質異常・糖尿病のある人は要注意)。

ブルガダ型(coved)

危険な不整脈(心室細動、心室頻拍)がおこる可能性があります。循環器科受診をお勧めします。特に過去に失神発作があるとき、近親者に突然死した人がいるときは必ず受診してください。

ブルガダ型(SB)

危険な不整脈(心室細動、心室頻拍)がおこる可能性があります。過去に失神発作があるとき、近親者に突然死した人がいるときは循環器科を受診してください。

ブルガダ型の疑い

ブルガダ型心電図として典型的ではありませんが、可能性も否定できません。過去に失神発作がある場合、近親者に突然死した人がいる場合は循環器科を受診してください。

右房負荷

右心房が拡大している所見が見られます。先天性の心臓病・肺高血圧などの疾患の他、胸郭の変形にも見られます。他の所見と合わせて総合判断するので、判定区分に従ってください。

左房負荷

左心房が拡大している所見が見られます。左心室肥大・心臓弁膜症などの疾患の他、高身長、漏斗胸などにも見られます。他の所見と合わせて総合判断するので、判定区分に従ってください。

反時計回転(正常)

心臓の位置がやや左回り(反時計方向)に回転していることをいいます。一般的に問題はありません。

時計回転(正常)

心臓の位置がやや右回り(時計方向)に回転していることをいいます。一般的に問題はありません。

T波増高(高度)

T波が高いです。心室肥大や高カリウム血症などで見られることがありますが、健常者にもしばしば見られます。受診の要否は判定区分を参照してください。

T波増高(軽度)

T波がわずかに高いです。心室肥大や高カリウム血症などで見られることがありますが、健常者であり放置してよい可能性が高いです。受診の要否は判定区分を参照してください。

陰性U波

通常上向きを示すU波が下向きになっています。心臓弁膜症・狭心症などに見られることがあります。他の所見と合わせて総合判断するので、判定区分に従ってください。

QT延長の疑い

心室が収縮している時間が通常よりやや長いです。電解質異常や先天性の心臓病などに見られます。過去に失神発作があるとき、近親者に突然死した人がいるときは循環器科を受診してください。うつ病の治療薬や抗生物質で悪化することがあるので、これらの薬剤を使うときは、主治医と相談してください。