院長のご挨拶

医療で「個の尊厳」の具現化を支援

「段取りが、以前のように行かなくなった」、「不安に駆られ、いても立ってもいられない」、「周囲に見透かされている。たくまれているようだ。」―――。どうもおかしいと気づきつつも、「年のせいだから」、「単なる性格の問題だろう」、あるいは、それこそ「気のせいだ」と逡巡し、憂え悩んでいらっしゃいませんか。

また、「物忘れ」に始まって心身の不調を患ううちに、徘徊による迷子や、真夜中の大声、暴力、所かまわずの失禁や弄便などの激しい症状に、ご家族ともども、窮してしまってはいないでしょうか。 「精神科リハビリテーション」という分野では、「精神疾患を抱えた当事者が、自ら望んだ環境で、落ち着き、満足できるように支援することを使命とする」と謳っています。言い換えれば、「個の尊厳」(基本的人権)の具現化を支援する、ということです。

「個の尊厳」が侵害されれば、最終的には裁判所が擁護してくれましょう。精神に不調を抱えることを余儀なくされ、「個の尊厳」をその人らしく具体的に花開かせるに難渋し、支援を求められずにいられなくなった時こそ、われわれ医療・福祉担当者の出番です。

精神に不調を抱えた方々に寄り添うたびに、自らあきれるほどの至らぬ行状が照らし出されます。それでも、当事者や地域の方々、医療スタッフの皆でできあがる“共同体”につながっていられる喜びは、ひとしおです。

至らぬ行状へのあがないと、当事者の苦悩に寄り添わせてもらっている恩への謝意を込めて、「人を尊び、命を尊び、個を敬愛す」という当グループ理念のもと、精神科リハビリテーションの使命の実現はもとより、確かな診断と治療、看護に向けて、しのぎを削る所存です。

当院は平成9年5月に設立以来、20年にわたって、認知症を中心とした老年期の精神障害の方々への医療に携わって参りました。引き続き、ここ湘南の地に深く根ざし、ご高齢の方の精神面の健康増進、単科の精神科病院としてできることを、地道に取り組んでいきたいと存じます。また、時勢に遅れず、常識に縛られることなく、研鑽を重ねていく所存です。そのためには、地域の皆様との意見交換が大切です。ぜひ、お力をお貸しください。

お年を召して精神に不調を抱えることを余儀なくされた方、あるいはそのご家族の皆様に、「安心して生活を送れていらっしゃいますか。後ろ盾のない心もとなさを抱えてらっしゃいませんか――」と口火切りつつ、自信を持って皆様に寄り添わせていただけるようになれたら嬉しく存じます。

湘南さくら病院 院長 鈴木 雄壱